サウンドテニスの新世界   競技開発  全盲・弱視の人達に テニスの楽しさを 伝える

  
1988年に実施した最初のテニス講習は 運営と指導に協力したテニス関係者やボランティアの人達にとっても 初体験の内容でした。
NPO団体が 国内初の車椅子テニス環境づくりを進めた当時と同じに 全盲の人達がテニス参加することは 想定外のテニスです。


「視覚・視力ハンディキャップテニス講習」 国内初のプログラムは ボールもラケットも 硬式テニス用具を使用した内容から始めました。
講習の後半プログラムは ショートテニスとして競技使用されていた スポンジボールの打球体験を加えました。


硬式テニスとスポンジテニスの講習は 全盲の人達が打球出来る距離にボールを落とし バウンドさせて 打球する体験方法でした。
視力でボールを見ることが出来ない全盲の人達に対して 打球のタイミングを 声で合図し 飛球方向も 声で説明しました。



  当時 受講した人達の感想を 紹介します。

 ● テニスは 以前からやってみたいと思っていたので楽しかった。 何もしないで 順番を待つ時間が長く思えた。
 ● ボールを上手く打てた時は 気持ち良かった。 ボールの弾む時に音があると良い。 (スポンジボールの体験から)
 ● 盲バレー(フロアバレー)や盲野球よりも 立体的な変化があるので、覚えられれば面白そう。
 ● 一度打ってみたいと思っていたので、普通のテニスボールを打てたときは楽しかった。
 ● 面白かった。出来れば続けていきたい。 音の出るボールの方が良い。


この講習会で実施したプログラムは、一定の位置で打球する体験です。 しかし、競技としてのテニスは 同じ場所や位置にボールが弾むことはなく 対戦相手の打球が どこに弾んでも 正しく返球出来ないと ゲームポイントを失うことになります。

全盲の人達は 相手の打球がどこに弾んだのかを耳で確認し・・ 弾んだ高さにも反応して ボールやラインが見えなくても 正しく打球する必要があります。
文字にすると簡単ですが、実際のプレーは簡単ではありません。 しかし、不可能ではないことを実証して 新しいテニス環境が生まれました。

全盲の人達が楽しむスポーツの大半は タテ・ヨコの方向や位置を ボールの動きから判断する 2次元スポーツです。
しかし テニスは 3次元スポーツです。  左右、前後に加え、高さの変化も伴います。 
視覚ハンディキャップテニスとサウンドテニスは この変化を 床面に弾んだバウンド音の位置で確認して プレーするテニスです。



■硬式テニスボールは 視力のない人達にとって 顔や身体に向かってきた打球は 見えないために 危険性があります。
  スポンジボールは 安全性に優れていますが バウンド音が発生しないために 全盲の人達のテニス競技に適しません。
  このため スポンジボール内部に音の出る部品を加工挿入しました。 最初は金属製の鈴、次に盲卓球ボールを採用しました。

ボール1

■競技中のボールの高さは いろいろですから、視力のない人達には 打球が難しくなります。
  このため 重度障害対象のテニス競技に設定した 3パウンド後の打球を有効とした競技方法を規定に導入しました。
■3パウンドルールは 最初に設計した 「視覚ハンディキャップテニス」 と バージョンアップした 「サウンドテニス」 の競技基本としています。
  この規定は コートや床上にバウンドしたボールが、3パウンド後の高さが30cm以下になる点を 活かしています。

  30cm以下高さのボールを打球する方法は・・ ラケットを床上を擦るようにスウィングことにより 高い確率の打球を可能します。
 小型ラケット幅は 30cm前後のため ラケットを床につけて動かすと バウンドが5cm以下のボールを含む大半の打球が可能になります。


 視力で確認できない全盲の人達が特に難しいとされていた問題を この打球方法で解決したことで 国内外初のテニス競技が実現しました。

3パウンドルールは 競技中の対戦相手の打球方向の確認と打点の位置に移動することに 役立ちます。

   @  第1パウンド音は  対戦相手の打球方向と距離感の確認に 活用します
   A  第2バウンド音は  ボールが近づいてくるのか・・ 遠ざかっていくのか・・ の判断に 活用します
   B  第3バウンド音は  ボールが打球に適した位置にあるのか・・ の判断に  活かして 打球します


視覚ハンディキャップテニスと 競技内容をバージョンアップしたサウンドテニスは・・ 硬式テニス内容に準してプレーします
サウンドテニスは 障害者スポーツとしての内容を超えた 視力の有無に関係なく 誰でも一緒に競技交流可能な市民スポーツとして設計しています